戦略コンサルタントが教える、思考力を鍛えるケース面接の考え方

現役戦略コンサルタントとして活動するかたわら、採用チームや、個人ケース面接を通して感じたことを発信していきます。

実践ケース問題03: 「コーヒー(缶&PET)商品セグメント強化」

本記事のテーマ

 今回は、例題を元に、ケース問題を解くときに備えておくべき視点を解説します。そのうえで、コンサルタントに求められている提案とは何か、「具体的」な回答とは何かについて、言及したいと思います。

 

【ケース問題】

 あなたはコンサルタントとして、日本でも有数の飲料メーカーのプロジェクトに配属されています。今回、本社の役員ミーティングにて、次の相談をされました。

  • 「我が社の主軸事業であるコーヒー(缶がメイン。ペットボトルも存在)の売上が伸び悩んでいる。コーヒーセグメントの自社シェアを伸ばすための施策を考えてほしい。」

 さて、この相談にこたえる上で、以下の2点の資料を作成することになりました。

  • ①:コーヒー事業の問題点の整理と課題の特定
  • ②:売上を伸ばすための、具体的な施策提案

 まず、①について、何を検証・考慮すべきか述べてください。
 次に、①の内容を検証した結果を仮定し、その仮定に合わせた具体的な施策(②)を、1つ提言してください。 

 

 

 

A: コンサルタントとして、価値を出すべきポイントに集中しよう

 さて、今回のケース問題は、テーマが「コーヒーの缶やペットボトル」であるため、最終的な打ち手が「新商品開発」「既存商品の展開方法改善」といった方向性に落ち着く可能性が高く、比較的「クリエイティブ」的な要素が強く入ったものです。

 しかし、あくまで「コンサルタント」として回答するよう要請を受けているので、「論理的視点」や「コンサルタント的視点」が必要です。

 詳しくは後述しますが、提案する内容には、「コンサルタントとして価値を出せる部分とそうでない部分が存在」します。

 

 まず、「新商品開発」の部分です。当然ですが、新商品を開発し、それを市場に展開していくうえで、

  • クライアント社内の各部署(マーケティング部、商品企画部など)
  • クライアントが別途雇っている「外部のクリエイティブ会社(電通/博報堂など)」

と一緒に仕事をすることになるはずです。

 様々な主体がかかわっている中で、“あらゆる内容”に対して、コンサルティング会社からの提案が求められているわけではありません。

 例えば、市場の把握は、コンサルティング会社としての知見を活かして、クライアントが行うより深い調査/分析/示唆抽出を行うことが可能でしょう。

 また、クライアントが外部のクリエイティブ会社に何か依頼するとき、最低でも「新商品開発の“方向性”」程度は決めたうえで依頼するはずですので、マーケティング部と一緒に、市場理解を踏まえて上で「新商品開発とその展開の “方向性”」を議論することは、コンサルティング上、不可能ではないでしょう。

 一方、パッケージやTVCMの内容などは、クリエイティブ会社が専門的知見を持っている分野です。彼らの様な専門家に対し、コンサルティング会社がパッケージやTVCMの “細かい”内容に口出しをしても、意見を反映させることは難しく、労力や時間を使うメリットが小さいです。

 

 

B: 打ち手の例は、具体的性が必要

 今回のケースの「①」は、「事業の問題点の整理と課題の特定」と書かれていることからわかるように、ある程度、客観的かつ全体感を持って記載する必要があります。しかし、「②」は「具体的な施策提案」することを求められています。

 

 さて、“具体的”な提案とは、どのようなものでしょうか。例えば、いろいろな分析をした結果、

  • 「低価格帯の商品が必要」
  • 「商品の差別化/ブランド力強化が必要」

といった“打ち手”を提言しても、あまりに一般論過ぎて「で、どうするの?」とクライアントから言われてしまいます。

 「低価格」で勝負するのであれば、

  • 「既存のブランドから低価格商品を出すと、既存の商品まで“安っぽい”イメージをもたれてしまう。そのため、新規のPB商品をメーカー名も隠した状態で新たに立ち上げ…。」
  • 「PBを販売する小売店は、価格イメージの強いディスカウント業態の小売りチェーンが適している。具体的には、弊社との関係が良好であり、価格低下を求められている、○○スーパー、△△ホームセンターに対し、専売で提供して…。」

といった感じまで具体化することで、クライアントが次のアクションを起こしやすくなります。

 一方で、「激安PB商品の味」「極限まで安くするための原材料調達方法」などは、「担当部署の違い」「時間的な限界」「今回の回答の方向性(“価格”の視点が一番のポイントと設定している)」を鑑みると、細かすぎる話であり、優先度落ちる(必須とは言えない)と考えられます。また、役員ミーティングで、このレベルの細かい話を1から考え出す必要性があるとは思えません。このレベルの話は、各担当部署に詳しい専門家がいるはずであり、変に口を出したりせず、彼らに任せるべきでしょう。

 

 そもそも、問題解決プロセスは、大まかに、「現状分析」⇒「課題特定」⇒「打ち手立案」⇒「打ち手実行」といった流れをくみます。「打ち手」は、「課題特定」のプロセスを経た後にあり、うまく「実行」すれば“問題解決が完了”するため、アクションが起こしやすい、具体的なものであるはずです。

 「具体性のほぼない “一般論”そのままの“打ち手”」は、むしろ“現状分析”の範囲内であると判断され、そもそも“打ち手”を提言していない/質問に答えていないと判断される可能性があります。打ち手の提言を求められている以上、ある程度具体的に提言することを意識したいところです。

 

 

まとめ: 打ち手の良し悪しよりも、それまでのプロセスが重要

 最後に1つ注意ですが、ケース面接は、決して「打ち手の良し悪し」を見るのではありません。あくまで、

  • 「打ち手を導出するまでの。考えるプロセスを含めた、全体の“納得性”」

を見るものです。そのうえで、「現状分析(①)」の内容を踏まえた施策(②)であることが必要です。

 実際のコンサルティングにおいても、“結果的”に回答が正しかった(とあとから判明した)としても、プロセスにおける全体感のない(説得力のない)回答が、プロジェクトで価値を出すことは困難なことが多いです。外部のコンサルティング会社に依頼する理由の1つは、「客観的に見て正しいのか」を期待している側面があるからです。特に、このような“クリエイティブ”系のケース問題の時は、このことを念頭に置きつつ回答するよう、意識しましょう。